暮らし

遠州のいきもの観察記 Vol.36

群れで暮らすかわいい小鳥エナガ -柄長-

(2020年3月5日号掲載)

愛くるしさは小鳥の中でトップクラス

「チッチッ」「チルル」「チーチー」「ジュリリッ、ジュリリッ」と、かしましい女子会よろしくいろいろな声を出しながら、盛んに樹間を飛び回る小鳥たち。春を待つ静かな森がとたんに華やぐひとときだ。

声の主はエナガという名の小鳥。ふわふわの白い羽毛で包まれたまん丸の体、おしり付近と翼の一部は淡いピンク色。このファンシーな配色に加え、黒目がちな瞳と、おちょぼ口を思わせる小さなくちばし。人間の母性本能をくすぐる要素をたくさん持っている。身近で見られる「かわいらしい小鳥」といえば、その筆頭に挙がるのがこの鳥ではなかろうか。枝の混みあう樹間も短めの翼で小刻みにすり抜ける。動きが早くて観察するのが大変だが、双眼鏡でそのかわいい顔を捉えた時の喜びはひとしおだ。

木々の枝の隙間からは、長い尾羽が見え隠れ。全長14センチ程度だが、その半分を尾羽が占める。漢字で「柄長」と書く理由がわかる。体重は8グラム程度。スズメが24グラム前後ということなのでその軽さにも驚く。エナガは細い枝先にも鋭い爪でぶらさがり、樹皮や冬芽につく小さな虫などを巧みに捕らえる。長い尾羽がバランスを取るのに役立つのだろう。

まだ寒い早春の巣作り

まだまだ寒い2月下旬、餌を取る行動とはやや違った動きをするものが現れる。木の幹に止まり、樹皮につく、一見コケのように見える地衣類のウメノキゴケなどをはがし取っている。それをくわえて一度その場を離れるが、またすぐ戻ってきてはがし取る。どうやら巣作りを始めているようだ。早春から営巣するエナガの巣は寒さ対策がバッチリだ。巣は木の股などに作られるが、卵がむき出しのお椀型ではなく、縦長の球体をしている。外壁は地衣類などをクモの卵のうや蛾類の繭をほぐした糸でしっかり編み込まれる。内装は他の鳥の羽毛や獣の毛が敷き詰められる。これなら厳しい寒さもしのげるというわけだ。

両親以外のエナガが子育てを手伝うこともある。夏には他の家族と合流する。エナガは繁殖期以外は群れで暮らす鳥なのだ。バリエーション豊かな鳴き声は群れでのコミュニケーションに欠かせないのかもしれない。

エナガは桶ヶ谷沼や飯田公園、佐鳴湖公園、県立森林公園、秋葉神社などで観察できる。かわいい姿に癒やされよう。

文・イラスト 浜松市環境学習指導員 瀬下 亜希