暮らし

遠州のいきもの観察記 Vol.39

新緑の木に現れる白い卵塊 モリアオガエル -森青蛙-

(2020年6月4日号掲載)

森に暮らすカエル

気付けば初夏となり、森ではみずみずしい若葉が辺り一面を緑に染めている。すがすがしい風景を堪能していると、ポンと目に飛び込んできた白いもの。木に綿菓子が付いている?!真っ白で邪気のないその形態が不可思議で、戸惑いを覚えながらも、すぐ正体に思い当たる。初夏の風物詩、モリアオガエルの卵塊だ。木に卵を産みつける珍しいカエルとして有名になり、今も全国各地で天然記念物として保護されている種だ。

モリアオガエルは成体で4〜8センチほどの大きさで、森に暮らす木登りが得意なカエルだ。その名の通り、全身が緑の地色のアオガエル。体に茶色い斑点の出ている個体もいる。木登りを特技とする秘密は、長い指とその先の吸盤だ。また樹上の乾いた場所での生活に適合するためか、よく見ると皮膚も少しブツブツしていて厚めの印象がある。

オスとメスの共同作業

雨の降る夜、メスとつがうことを求めて水辺へ集うオスたち。木によじ登り、「ココココ...」と木をたたくような独特の声でメスを誘う。その声に誘われ、現れたメスの背中に飛び乗るオスたち。泡巣(あわす)と呼ばれる卵塊は、オスとメスの共同作業で作られる。オスの刺激によってメスが出す粘液と水分を、オスもメスも一緒になって後ろ足でかき混ぜる。その泡の粘度はなかなか強い。しっかり泡立てるには力がいるだろう。跳躍が特徴であるカエルの脚力が生かされる瞬間だ。樹上の卵を無事孵化(ふか)させるには、産卵から孵化までの期間を乾燥に耐えなければならない。産卵後、しばらくすると泡巣の表面はパリパリに乾く。しかし内部は水分をたっぷり含み、しっとりした状態が保たれている。この湿気を保つにはあの粘度が必要なのだろう。

驚くことに、高い樹上に作られたどの泡巣も、その真下にはちゃんと水面が広がっている。泡巣の中で孵化したオタマジャクシは、体をよじらせ元気に動き回り、泡巣からしたたるようにボトボトと水面へ落下する。こうしてカエルになるまでの水中生活が始まるのだ。

遠州地域では、北区、浜北区、天竜区などの山近くの水辺で泡巣を見ることができる。しかし、その生息環境は年々失われ、モリアオガエルは、静岡県では準絶滅危惧に指定されている。生息する自然環境を丸ごと守っていきたい種の一つである。

文・イラスト 浜松市環境学習指導員 瀬下 亜希