暮らし

遠州のいきもの観察記 Vol.41

おしゃれなさざ波模様のチョウ ヒメウラナミジャノメ - 姫裏波蛇の目 -

(2020年8月6日号掲載)

印象の薄い?!チョウ

比較的よく出会うのに、その存在がちっとも知られていない生き物というのは、この世にごまんといる。ヒメウラナミジャノメもそのひとつではなかろうか。初夏から秋にかけて、ちょっとした樹林があるような公園を歩けば出会うチョウのことだ。

大きさは2センチ程度。遠目には白っぽい茶色で目玉模様がついた翅(はね)。チョウにしては華やかさがなく、ガほど嫌われる要素もない、極めて控えめな印象だ。また草の上をすれすれに飛ぶので視界に入りにくく、人々に気付かれにくいというのも存在の薄さに拍車をかける。

しかし、一見地味な翅もしっかり観察すると意外にも凝ったデザインであることがわかる。薄汚れた茶色に見える翅は、茶色と白の細かなちりめん模様がさざ波状に施されている。そこに浮かぶ「眼状紋(がんじょうもん)」と呼ばれる目玉模様は、黄色で縁取られ黒丸がくっきりと浮かび上がる。これは鳥などからの攻撃を防ぐためのカムフラージュの役割があるのではと考えられている。目玉模様の中には、まるで潤った瞳を表すかのように青く輝くハイライトまで入っている。

幼虫はどこに?

虫が見られるピークは初夏から秋までに3回ほどあるようだ。初夏に生まれた幼虫は夏までに成虫になり、その子孫がまた秋までに見られるというわけだ。それならば幼虫もさぞたくさん見られるだろうと探してみる。ところが、そう簡単には見つからない。幼虫はチヂミザサと言うイネ科の植物などを食べて育つ。この植物もあちこちで見られる。食事中の幼虫がいないかと葉を丹念に探すが気配もない。図鑑などを調べ直すと、幼虫は夜行性で昼間は草の根ぎわに隠れているとある。今度は地面に這いつくばって根ぎわを見る。付近の落ち葉も一枚一枚ひっくり返し見ていたら、手に取った落ち葉からポトリと何かが落ちた。首尾よく補虫網の上に。イモムシだ!虫眼鏡でその顔を見ると小さな耳状の突起がついている。ヒメウラナミジャノメの幼虫だ。これもまた枯葉に似た地味な色。気付かれないこと、それは彼らにとって命をつなぐ戦略でもあるのだろう。

遠州では花川運動公園や浜松城公園、桶ヶ谷沼、県立森林公園などで出会える。お散歩がてらヒメウラナミジャノメを探してみよう。見つけても気付かないふりをして。

参考:「小学館の図鑑NEOイモムシとケムシ」(小学館)
文・イラスト 浜松市環境学習指導員 瀬下 亜希