暮らし

遠州のいきもの観察記 Vol.44

高貴な姿が人気の冬鳥 ミヤマホオジロ-深山頬白-

(2020年11月19日号掲載)

海を越えてやってくる

ピシッと高く逆立てた頭の黒い羽根、その脇を鮮やかな黄色い太めのメッシュが、射し込む光のように入る。どこか高貴な佇まいさえ感じさせる容姿の鳥。穏やかな初冬の陽だまりで、ふいにその姿に出くわしたとき、心踊ることは間違いない。バードウォッチャーのなかでも人気の高い冬の渡り鳥、ミヤマホオジロだ。学名も「エレガントなホオジロ類」という意味だ。ちなみにオスは頭部のきれいな黄色を引き立たせるかのように目の周りは黒く、喉の下も男らしい胸毛のように黒の羽毛が生える。しかし、メスには黒い部分はなく、全体的に茶色のトーンでまとまっている。

枯葉舞う季節を迎える頃、ミヤマホオジロは中国大陸方面から冬越しのために海を渡ってやってくる。スズメよりやや大きいくらいのサイズ。日本に一年中いるホオジロという名の鳥と同じ仲間で、主に西日本で見られる。「深山」とつくが、日本では低山から平地でも見られる。

声を頼りに探す

冬に聞かれる声は「地鳴き」という地味な声。繁殖期の「囀り」とは違う。山野を歩いているとちょっと開けた草むらから「チッ」とあまりにも小さな声がする。ミヤマホオジロの地鳴きだ。ただし「チッ」と鳴く鳥は複数種いる。聞こえた「チッ」がはたしてお目当ての鳥かどうか音だけで判断するのは難しい。音がしたらその方向に姿がないかと探す。といってもそれも実は簡単ではない。ミヤマホオジロは全体的には茶色模様。一面枯れ草色となった風景に完全に同化して、すぐそばにいても姿をとらえるのが難しいのだ。ミヤマホオジロが飛び去って初めて目の前にいたことに気付くなんてことはしょっちゅうある。

鳥はくちばしにその生活スタイルが現れる。主に昆虫食のヒタキの仲間は細めのくちばし、主に種子食のアトリの仲間は太いくちばし。ミヤマホオジロのくちばしはやや太めで主に植物のタネを食べ、繁殖期には虫も食べる。タネも虫も両方食べるホオジロの仲間はその中間というわけだ。

落葉し、すっきりした風景が広がる冬は鳥の観察をするのに最適な季節。遠州でミヤマホオジロに出会うチャンスがありそうなのは引佐湖周辺、県立森林公園、秋葉山や桶ヶ谷沼など。晴れた日にちょっとレアな冬鳥を探してみるのも一興だ。五感を研ぎ澄ませて挑戦してみては。

文・イラスト 浜松市環境学習指導員 瀬下 亜希