暮らし

遠州のいきもの観察記 Vol.45

森のかわいい軽技師 ヒガラ-日雀-

(2020年12月24日号掲載)

小鳥の玉手箱

柔らかなオレンジ色の光が静かに冬景色を照らす朝。落葉し、すっきりした風景に「ジュクジュクジュク」「ニーニーニー」「チーチー」など、さまざまな種類の声が響き始める。一体どこから?と見回すと、それはそれはにぎやかに木のこずえに現れた小鳥の群れ。「カラの混群」と呼ばれる鳥たちだ。カラとはシジュウカラやヤマガラなど、主にシジュウカラ科の鳥を指す。ただしその集団の中にはメジロやコゲラ、エナガなど他の科の鳥もいる。これらの種は繁殖期以外は群れで行動する。どれも小鳥だ。タカなどの天敵対策や効率的な餌探しのためと考えられている。

白黒模様のシジュウカラ、オレンジ色と黒のヤマガラ、黄緑色のメジロなど、多様な色柄の鳥が一堂に会するこの群れは、さしずめ小鳥の玉手箱のよう。どの鳥もせわしなく動き回り、餌探しに余念がない。中でもひときわ体が小さく、樹冠付近で、よりせわしなく動いているのが今回の主人公であるヒガラだ。

とんがりヘアを見よう!

ヒガラはシジュウカラに似るが、頭から尾羽の先までが11センチ程度とシジュウカラよりひと回り小さく、カラ類の中では日本最小。遠目には尾羽が短いのも特徴。わかりやすく識別するには、胸の模様を見るといい。シジュウカラにはネクタイみたいな黒スジがあるが、ヒガラにはなく、代わりに赤ちゃんのよだれかけのような模様がある。運よくヒガラの姿を捉えられたら、とんがりヘアをチェックしよう。頭に冠羽と呼ばれる短く立った羽毛がある。ちょっとおしゃれでとても愛らしい。ただし、その冠羽を見届けるのは容易ではない。なにしろヒガラは曲芸を披露する軽技師のようにチョコマカ動く。枝先に止まったかと思えば、そこから落っこちるように下の枝へと身を翻して飛び移り、かと思う間もなく次の枝へと移動する。こんな芸当ができるのは身軽な体以外に、その足指に秘密がある。指だこが比較的発達していて細い枝をつかんだりぶらさがったりするのに適しているのだ。ヒガラは小柄なせいか、その声は甲高く、か弱く感じるほど小さい。「チリリリ」と鈴のような音が聞こえたらヒガラかもしれない。

亜高山帯で子育てするヒガラ。冬は低地へ越冬にやってくる。浜北区や北区などの丘陵地でこの冬、混群に出会ったら、ぜひかわいいとんがりヘアを探してみよう。

文・イラスト 浜松市環境学習指導員 瀬下 亜希