暮らし

遠州のいきもの観察記 Vol.47

"炎のたてがみ"を持つ冬の渡り鳥ヒレンジャク -緋連雀-

(2021年2月18日号掲載)

尾羽の先の赤色が目印

その鳥を初めて見たのは、まだ寒い2月下旬、自宅前の電線だった。頭上から聴こえる「チリリリチリリリ...」「ヒー...」というたくさんのか細い声に気付き、見上げると、行儀よく同じ方向を向いて止まる20羽ほどの群れ。その並んだ尾羽の先端が陽の光を受け、鮮やかに透ける赤色が見えた!慌てて双眼鏡を取りに家へ戻り、改めて見てみると、冬の渡り鳥ヒレンジャクだった。尾羽の先の赤色はこの鳥のトレードマークなのだ。子育てはシベリアなどで行い、日本へは冬越しにやってくる、ツバメよりやや大きい印象の鳥だ。

ヒレンジャクは、ハッとするほどカッコ良く美しい姿をしている。最初に目を引くのはその顔だ。炎のシルエットのごとく逆立つ頭頂部の羽毛。その冠羽(かんう)と呼ばれる、ほんのり赤味のある部位に、目から続く歌舞伎の隈取(くまど)りのようにせり上がる黒いライン。それがヒレンジャクの表情を引き締めて見せる。体の色合いも独特だ。胸から腹、尾羽の方へと、淡い褐色から控えめな黄色、そして柔らかい赤色へと絶妙なグラデーションが続く。まとう羽毛の一枚一枚の区切りが見た目には全くわからず、全体にとても滑らかな質感に見える。学名にも「シルクのような尾」という言葉が入る。

垂れ下がるふんの訳は?

古語では「ほやどり」とも呼ばれる。「ほや」とは木に寄生する植物でヤドリギを指す。ヒレンジャクはこの植物の実を好んで食べ、種子散布に役立っている。ヒレンジャクの排泄は、おしりから淡い黄色のネバネバしたものに包まれた種が数珠つなぎに垂れ下がり風に揺れる。お世辞にも美しいとは言えない場面だが、このネバネバはヤドリギ由来と考えられる。ヤドリギの実は指でつぶすと強い粘りが出る。この物質が枝に引っ掛かり発芽するのだ。ちなみにレンジャクは「尻鎖(しりくさり)」との異名を持つ。かような排泄を品良く表す古人(いにしえびと)の感性には恐れ入る。ヤドリギにとってこの尻鎖は命をつなぐ金の鎖、そうとらえれば途端にふんが縁起物に見えてくる。

ヤドリギの種の排泄に必要なのか、ヒレンジャクは水を良く飲む。河川敷など水辺周辺にあるヤドリギが観察の狙い目だ。ほかにもクロガネモチやピラカンサなど、庭木に多い木の実もよく食べる。この冬、鳥の群れを見つけたら尾羽の先が赤色かどうかチェックしてみよう。電線の群れにもぜひご注目を。

文・イラスト 浜松市環境学習指導員 瀬下 亜希