マネー

最終回 相続の基本

財産は少ないほど、相続の時にモメやすい。

(2017年3月2日号掲載)

相続税を納める人が増加中

鈴木 聡
(すずきさとし)

ファイナンシャルプランナー、ふくろいFP-SERVICE代表。保険、住宅ローン、資産形成、運用、相続対策など各種相談を受け付け中。袋井市上山梨3-7-1 0538-49-2134
(9:00~21:00)

昨年暮れ、国税庁から平成27年分の相続税の申告状況の発表がありました。これによると、相続税の課税件数が前年よりも倍に増えていることが明らかになりました(図1参照)。

これは、平成25年に相続税法が改正され、平成27年1月以降に相続が発生した場合、基礎控除などが減額されたためです。その影響から、相続税を納める人が前年よりも増えたというわけです。

増えたといっても、全体の1割程度。相続税を納める人の割合はまだまだ少ない状況です。一方、相続財産が少ない人も課税対象となったため、1人当たりの相続税額は減っています。それでも、全国平均で1人当たり1700万円も納めています。

不動産は分けにくい

相続税を申告した人が取得した財産のうち、約4割は「不動産」が占めています(※)。不動産は土地や家屋などですが、現金や預貯金、株等の金融資産に比べ、「分けにくい財産」かつ「現金にしにくい財産」です。

それでも、税金は納めなければなりませんし、現金で一括納付が原則のため、相続財産に不動産が多いと問題が発生します。

課題は大きく2点あります。①相続税の納税資金をいかに準備するか。②どのように財産を分割するか。相続が発生しても9割の人は、相続税の課税対象外です。だからといって「我が家は大丈夫」ではありません。相続財産が少ないと分割をめぐってモメます。

裁判所の司法統計(図2)によると、遺産分割でモメたため、平成27年に家庭裁判所に対して調停や審判の申し立てた件数は年間約15000件。平成15年よりも3割増えています。そして、調停が成立したり、審判が認容されたりした件数は年間で約8200件。その内約6200件(76%)が「遺産額5000万円以下」での争いとなっています。

相続を「争続」にしないために

遺産額が5000万円ほどの場合、一般的には相続税の支払いはほとんどないと思います。なぜなら、相続財産が「基礎控除3000万円+相続人数×600万円」までは課税されない制度があるからです。

例えば、夫が亡くなり相続財産が5000万円で、相続人が妻と子2人の場合、「基礎控除3000万円+3人×600万円=4800万円」を控除できます。そのため、課税遺産総額が200万円となり、法定相続分に沿って分割しても相続税は10万円程度です。

右記の家族構成で、相続財産が4000万円だった場合、相続税は納める必要はありません。しかし、遺された財産が住んでいる土地や建物のみとなると、分割したくても分割できないため、問題が発生します。

民法上、子は法定相続分が認められているため、財産の一部を要求する権利があります。「母や長男が住んでいる家を分ける!」なんてこと、できるでしょうか。相続財産に分けにくい不動産が多いと「相続」が「争族」となり、親しかった家族も仲違いになってしまいます。こうした事態を避けるために、家族でしっかり話し合い、事前の対策が必要となります。

※国税庁「平成27年分の相続税の申告状況について」参照

【図1】相続税を払う人は少ない

【図2】遺産分割で"モメタ人"は増えている

ふくろいFP-SERVICE