人物

いま輝く人 びぶれ・インタビュー

榛葉 昌寛 テノール歌手

(2015年1月29日号掲載)

榛葉昌寛さん被災地へ祈りを込めて―。今から2年前、バチカン市国でレクイエムコンサートを行った一人の日本人がいた。掛川市出身のテノール歌手・榛葉昌寛さん。東日本大震災で犠牲になった人々への鎮魂や、復興を願う思いを音楽に託した。
「バチカンは世界に億人いるカトリック教徒の総本山。平和の象徴、祈りの中心です。そこでレクイエムコンサートを行うことで、世界から被災地へ応援のメッセージを届けられると思ったのです」

イタリアで震災を知った榛葉さん。その直後から、チャリティーコンサートや被災地への慰問を始めた。しかし、時が経つにつれ、被災者の間に芽生えつつある不安を感じ始めたという。
「震災から時間が経って、世の中の記憶が薄れ始めている。『自分たちは忘れられてしまったのでは?』と思う被災者の方が増えていると感じました」

海外にいる自分ができることは何か。考えた末にたどり着いたのが、バチカンでのコンサートだった。会場となった聖パオロ大聖堂は、バチカン四大聖堂の一つに数えられる権威ある建築物。当日は2500人を超える聴衆で埋め尽くされ、モーツァルトの「レクイエム」が堂内に響き渡った。
「コンサートはその翌年も同じ聖堂で開催。大勢の人々が日本を応援したいと考えてくれたことに感激しました」

昨年、聖パオロ大聖堂で行われたレクイエムコンサートには、ハーヴィー枢機卿も駆けつけた

3年目となる今年は、被災地を直接元気づけようと日本公演を開催。3月9日から約2週間、全国9カ所を周るツアーコンサートを行う予定だ。3月日には、掛川市生涯学習センターでも公演を行う。
「ステージで一緒に歌ってくれる合唱団を事前に募集したのですが、なんと180人もの人が参加してくれることになったんですよ。掛川市民の団結力の強さを感じますね」

掛川で過ごした学生時代までは、ミック・ジャガーにあこがれるロック少年だった。将来は音楽教師になりたいと考えていた矢先、偶然見たオペラ映画「椿姫」にノックアウトされた。
「三大テノールのプラシド・ドミンゴが主演だったんですけど、彼の歌唱力や存在感に圧倒されてしまって。その瞬間、『俺、ミックを辞めてドミンゴになる』と決意しました(笑)。時に人生を変えてしまうのが『音楽の力』。コンサートを通じて、そのパワーを大勢の人に感じてほしいと思います」

【主な活動】
2013年、バチカンで東日本大震災復興支援コンサートを開催。今年はイタリアからロッシーニ歌劇場楽団とともに来日し、被災地を中心に復興支援コンサートを行う。3月14日(土)午後6時半から掛川市生涯学習センターで公演予定。問:TEL.0537-24-7777

【PROFILE】
掛川市生まれ。東京芸術大学卒業後、国立ミラノヴェルディ音楽院に学ぶ。テーラモ市立劇場「椿姫」アフルレード役でデビュー。オペラ出演やコンサート活動など、イタリアを中心にヨーロッパ、アメリカ、カナダで活躍中。