特集

版画のココがオモシロイ。

第13回浜松市美術館 版画大賞展

(2017年2月9日号掲載)

浜松市美術館では昭和54年から3年に一度、版画にこだわって版画大賞展を開催し続けている。今年の開催は2月28日(火)から。浜松における版画の歴史を紐解きながら、版画の魅力に迫ってみよう。


第12回浜松市美術館版画大賞展
大賞 山﨑寿実さん
《Dream of Giant Architect》
(巨大建造物の夢)

版画といえば―。葛飾北斎を思い浮かべる人もいれば、小学校の図画の授業を思い出す人もいるだろう。そのどちらも庶民に愛され続けている絵画の一つであることに違いはない。身近であり崇高である版画は、時代と作者の思いを「そのまま写し取る」というピュアな芸術なのだ。

江戸時代、かわら版や浮世絵で一世を風靡した版画だったが、明治になり西洋の印刷技術が日本に持ち込まれると版画は一気に衰退。ところが戦後、版画を愛する芸術家たちの手によって「創作版画活動」が活発化し版画は復活していった。江戸時代の版画は「描く」「彫る」「刷る」が分業化されていたが、創作版画活動は一人の作家がすべてを担当し、作品を完成させるもの。そうして大衆芸術だった版画は、絵画芸術へと華麗なる変貌を遂げたのだ。

静岡県内でも多くの版画家が活動しており、中でも木版画の大城貞夫氏(現浜北区中瀬生まれ・明治41年~昭和56年)は舘山寺や下尾奈など地元を題材とした作品を多く残している。浜松市美術館は昭和46年に開館。所蔵品を収集するにあたり、郷土ゆかりの芸術家の優れた作品を収集する必要があった。そこで県内の優れた作品を収集・展覧、若手作家の掘り起こし、創作活動の一層の向上・普及と県民の関心を高めることを目的に「版画大賞展」を始めた。その後3年に1度のペースで開催し、第7回(平成8年)からは公募エリアを全国に拡大。今年は第13回として2月28日(火)から3月26日(日)まで開催する。

浜松市美術館は8番目に古い歴史を持つ公立美術館で、「版画」に限って定期展覧会を行っているのは全国に類を見ない取り組みだ。この稀有な「継続」により、現在同美術館で所蔵するさまざまな作品およそ7000点のうち、およそ半数ともいえる3200点が版画であることも見逃せない事実だ。

ひと口に「版画」といっても、その技法は多岐にわたる。版の種類が木、銅、布などさまざまあるように、着色する素材も墨、インク、油、チョーク、クレヨンなどさまざま。また、現代ではデジタルを駆使した版画作品も多く生み出されている。そのため、写し取られた絵画を一見してその技法を読み取ることは難しい。といいつつも、じっくり鑑賞すると、木版画などで生まれる細微で味わいのある版ズレ、デジタル画で精緻に計算しつくされた彩色なども見えてくるから面白い。

ここで鑑賞時の参考になる版画の主な技法と、版形式の異なる過去の受賞作品を紹介しよう。掲載作品は会期中に展示される予定なので、びぶれで予習した後はオリジナルの迫力をぜひその目で読み取ってほしい。

第13回浜松市美術館版画大賞展 奨励賞
酒井一樹さん 《Pray With Me》
版形式:凸版/版種:木版

水彩画と見紛うばかりの淡く柔らかな色づかいに、木版画の新たな可能性を感じる作品。祈りを捧げる人物の切なくはかなげな表情が版によって見事に表現されており、観る人の心をひきつける。加えて、画面の7割以上を占める空白を残すことで、その美しさが引き出されている。

第12回浜松市美術館版画大賞展 静岡放送賞
集治千晶さん 《「人形遊び-水上の星-」》
版形式:凹版/版種:銅板

一般的にモノクロで繊細な作品が多い銅版画の中で、本作はカラフルで躍動感のある画面構成に。銅版画は銅と顔料の化学変化により彩度が低下する傾向があるが、本作は発色も鮮やかで透明感すら感じられる。主人公が自由に軽やかに舞う姿には楽観的な思考と、そこに潜む不安や葛藤の両面が包含されているようにも見える。

第11回浜松市美術館版画大賞展 大賞
東条香澄さん 《「space」》
版形式:平板/版種:リトグラフ

何色ものインクや版を重ねてカラフルな作品を作れる技法で、あえてモノクロ表現した世界観が評価された作品。「space」の題から分かる通り、作者が表現したかったのは黒で着色された部分ではなく、それ以外の「空」の世界の広がりだとも考えられる。墨跡のようなデザイン性と画面構成から、東洋文化の豊かな感性を感じ取れる。

版画の主な技法

凸版画

版の出っ張った部分にインクを乗せて紙に写し取る技法。芋版画や消しゴムハンコなどもこの技法が使われている。

凹版画

凸版とは逆に凹部分に残したインクを転写する技法で、主に銅版画などで多く用いられる。

平版画

石版画やリトグラフとも呼ばれており、版に油分の強い素材で描き、その油が水にはじく性質を利用して作品を写し取る技法。

孔版画

「穴」を利用した技法で、穴をインクが通過するかしないかで作品を写し取るもの。代表的な技法に、布のような網目シートを使ったシルクスクリーンがある。

デジタル版画

近年生まれた技法で、その名のとおり版の作成から印刷までデジタルで行うもの。印刷データをデジタル化している「びぶれ」もいわばこの仲間。

版画の魅力に触れてみよう!

入賞者による作品解説

3月5日(日)午後2時半から(約30分間)、入賞者による作品解説が館内で行われます。先着20名程度。聴講無料、直接会場へ。

消しゴムアートスタンプを作ろう

3月19日(日)午後2時から(約2時間)、小学4年生以上の彫刻刀を使える人を対象に、凸版技法を用いて消しゴムスタンプを作ります。先着15名程度、費用は100円。当日、直接会場へ。

第13回 浜松市美術館 版画大賞展
  • 会期/2月28日(火)~3月26日(日) ※月曜休館、3月20日(月・祝)開館、翌日21日(火)は休館
  • 開館時間/9:30~17:00 ※最終日は16:00まで
  • 会場/浜松市美術館(浜松市中区松城町100-1)
  • 小学生部門/浜松市内の小学生による入選作品50点も展示
  • 料金/大人300円、高校生150円、中学生以下・70歳以上・障害者手帳所有者とその介護者1人無料(※小学生部門の鑑賞は無料)

主催/浜松市、静岡新聞社・静岡放送  問い合わせ/浜松市美術館 tel.053-454-6801