特集

資生堂アートハウスリニューアル・オープン

工藝を我らに 二〇一七

(2017年7月27日号掲載)

掛川市の資生堂アートハウスが今月、リニューアル・オープンした。現在、開催中の「工藝を我らに 二〇一七」は、5人の作家たちの新作を含む工芸品48点を展示する特別展。生活の中になじむ、品のある工芸美を楽しむことができる。

暮らしの中に「用の美」を

国内外の工芸品を展示する今回の企画展。会場の1コーナーでは、日常使いを想定した工芸品の展示が行われる(写真はイメージ)

良い器に料理を盛る。それだけで、食べ慣れたごはんが、いつもよりおいしそうに見える。お椀にお盆、グラス、花瓶、燭台......。優れた工芸品はどれも、ごく自然に生活の中へと溶け込み、使い手にささやかな喜びと気づきを与えてくれる。

今月、リニューアル・オープンを迎えた資生堂アートハウスで開催されている企画展「工藝を我らに 二〇一七」。期間中は、陶磁器や木工、金工、竹細工など、国内外の作家や職人が手がけたさまざまな工芸品を鑑賞することができる。

資生堂とアートの歴史は古い。1919年、資生堂初代社長の福原信三が、銀座に資生堂ギャラリーをオープン。まだ国内に画廊がほとんどない時代に、若い芸術家たちの作品を購入・展示する活動を行ったのが始まりだ。化粧品をはじめとする「美」に関わる商品を扱う企業として、日本の芸術文化の活動を一世紀にわたって支え続けてきた。

そうして集まったコレクションを収蔵・展示する目的で、1978年、掛川工場隣に作られたのが「資生堂アートハウス」だ。全国で活躍するアーティストたちの作品を、身近に鑑賞できる施設として地域の人々に親しまれている。今回のリニューアルでは耐震補強のほか、アートカタログを閲覧できる本棚や、多目的トイレなどを新たに設置。エントランスも広くなり、よりアートに親しめる空間へと進化した。

見て楽しむ、使って楽しむ

内田鋼一「白金彩線刻文茶碗」 2016年

「白金彩」はプラチナの粉末を用いた釉薬(ゆうやく)を、一度焼いた器の上に施して低温で焼きつける技法。大ぶりの茶碗で、表面には抽象的な線文が刻まれている

今回の企画展「工藝を我らに」は2年前に初めて開催され、今年で3回目。最終回となる本展は、5人の作家の新作を中心に、過去の出品作やアートハウスの収蔵品を展示する。

「かつては生活の中で当たり前のように使われていた工芸品ですが、今では使う人が少なくなり、職人の数もどんどん減っていっています。食器一つとっても、安価な大量生産品と、美術館に並ぶような高級な器とに二極化してしまって、普通の人が使える良質な工芸品が少なくなっている状況です。今回の展示は、私たちの日常から遠ざかってしまった工芸を、もう一度、生活の中に取り戻すための試みとして企画しました」と学芸員の福島昌子さん。

出展する作家は色鍋島の大家で人間国宝の十四代 今泉今右衛門をはじめ、陶芸家・内田鋼一、漆芸家の小椋範彦や小西寧子、コアガラスの松島巌ら。いずれも美しさと実用性を兼ね備えた作品が並ぶ。

「優れた工芸家たちは、使い方までしっかりと考えて作品を作ります。展示された工芸品を見ながら、『自分だったらどうやって使おうかな?』と考える楽しみを見つけていただけると嬉しいですね」

さまざまな工芸品の中から"品のあるもの"を基準に展示したという今回の企画展。作品の一部は和室やアンティーク家具の上に並べられ、日常使いを想定した展示も行われている。職人の息遣いまで感じられる「用の美」の数々を、心行くまで堪能したい。

資生堂が提案する美しい生活のための展覧会

十四代 今泉今右衛門「色絵吹墨墨はじき雪文化粧具入揃」 2016年

昭和前期に貞明皇后や香淳皇后のために、宮内庁から用命された化粧品入れを復刻した作品。雪の文様と色絵を用いて、モダンで可憐な雰囲気にまとめあげている

小西寧子「寿椀」(五客組) 2016年

リニューアル・オープンにちなみ、5つすべての椀に「寿」の文字が、白蝶貝の厚貝螺鈿で表現されている


小椋範彦「蒔絵鳳来蕉文短冊箱」 2017年

鳳来蕉(モンステラ)は熱帯アメリカ原産の観葉植物で、切れ込みの入った大きな葉が特徴。二枚の葉に異なる技法を施していて、質感の対比を楽しめる

松島 巌「目玉文マーブル紡ぎガラス瓶」 2016年

古代メソポタミアで生み出されたコアガラスの技法を用いて制作。ガラス表面をひっかいてマーブル模様を付け、複数の色で装飾を加えている

  • 掛川市下俣751-1/tel.0537-23-6122
  • 開館時間 10:00~17:00(入館16:30まで)
  • 休館日 月曜(祝日の場合は翌日)、8/14~17
  • 入館料 無料
  • www.shiseidogroup.jp/art-house/
資生堂企業資料館では『花椿』創刊80周年記念展を開催中。1937年に創刊した同社機関誌の、80年にわたる歩みを展示している。