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新聞販売店でやりがいを持って働く障がいのある若者たちを訪ねてみました。

(2018年12月20日号掲載)

障がい者の就労は、近年徐々に増えています。新聞を毎日家庭に配達している新聞販売店でも、障がいのある人を受け入れ、共に元気に働いているお店があります。今回は、そんなお店を訪ねてみました。

専門機関に窓口になってもらうことが大事

皆さんは「法定雇用率」という言葉を知っていますか?これは「障害者雇用促進法」という法律に基づき、労働者全体に占める障がい者の割合が、一定以上になるよう事業主に義務づけ、国が定めている制度です。従業員を50人以上雇用している民間企業の場合、法定雇用率は2.2%(2018年3月31日までは2.0%)となっています。

では、現在どのくらいの障がい者が仕事に就いているのでしょうか。浜松市の障害保健福祉課によると、2017年6月時点で全国の民間企業(従業員50人以上)で雇用されている障がい者数は49万5795人、実雇用率は1.97%、法定雇用率達成企業の割合は50.0%です。一方、浜松市の場合は、障がい者の雇用人数は3214・5人、実雇用率は2.13%、法定雇用率の達成割合は50.7%と、実雇用率、達成割合ともに全国を上回っています。これは県西部全体においても同様の傾向にあります。

「障がいには身体、知的、精神などがあり、障がいの程度も個人の持つ能力や適性も人によってそれぞれです。今後はそうした障がいのある人に応じた仕事の切り出しや職場環境の整備を行うとともに、地域のハローワークやNPOなどの支援機関と連携しながら、障がい者雇用を積極的に進めていくことが必要ですね」と市の担当者は話します。

さまざまな形で新聞配達に関わる仕事をしています。

新聞販売店は、新聞を毎日皆さんの家庭に「配達」していますが、それ以外にも新聞代金の「集金」、新聞購読の契約をする「営業」、そしてチラシを新聞に折り込む「折込」作業などの仕事があり、さまざまな雇用形態、雇用時間で障がいのある人が働いています。

アカマ新聞店(浜松市)では、もともと正社員として働いていた男性(52歳)が腎臓を悪くして透析を受けることになり、3年前からアルバイトとして勤務。夕刊の配達と集金を担当しています。「働きたい方がいて、その人にできる仕事があれば、障がいのある・なしに関わらず、積極的に雇用していきたい」と店主は話します。

また、浜松西部サービスセンター(浜松市)でも、「できる仕事があれば、障がいに関係なく雇用していきます」と店主が語るように、心臓機能障害(ペースメーカー装着)のある男性(66歳)が働いています。この方は20年以上正社員として勤務後、65歳の定年を機に、アルバイトに変更。現在、配達と集金の仕事を行っています。

あさがお新聞店(浜松市)では、3カ月前にハローワークの紹介で、下肢に障がいがあり、歩行に困難がともなう男性(55歳)を採用しました。「最初は配達のコースを覚える必要があるので、少し時間はかかりますが、根気よく朝夕刊の配達に取り組んでいます」と店主。「障がい者の雇用は社会的責務だと感じている」と言います。

神谷新聞店(掛川市)では、今年8月から障がいのある男性(34歳)がパートで夕刊の配達をしています。「最初は配達箇所を覚えるのに苦労したようですが、今では正社員になりたいと言っていて頼もしい限りです。周りの協力も必要ですが、障がいを一括りに考えず、個人をしっかり見ていけば、本人にもお店にも良い結果が生まれるはずです」と店主は話します。

では実際に、新聞販売店でどんな人がどんな働き方をしているのか、訪ねてみました。

特別支援学校の職場体験受け入れをきっかけに。

アウンズ・ヤナギハラ(浜松市)
店主 柳原 一貴さん(61歳)

社会貢献として障がい者の雇用は当然しなければならないと以前から考えていたのですが、ずっとその方法がわからないでいました。そんな時、たまたま近くに浜松特別支援学校の城北分校が設立され、職場体験の受け入れをしたことが採用につながるきっかけとなりました。当販売店で職場体験をした卒業生を毎年1人ずつ採用していったのです。現在3名の卒業生が入社し、チラシを機械にかけて新聞にセットする折込作業を行っています。事前に体験をしているので、仕事の内容も職場の雰囲気もわかっているし、現場スタッフの理解も得やすいと感じています。また当店では網戸や障子の張替えなどの困り事をサポートする事業も行っていますが、彼らはそれらの仕事にも取り組み、能力を伸ばしています。

今では1人で、機械を動かせます。

正社員 吉岡 脩平さん
(21歳)H27年入社 折込

最初は難しそうに見えた折り込みの機械ですが、だんだん慣れて、2年目には1人で機械を動かせるようになりました。チラシが多い日のほうがやりがいがあって楽しいです。最近は障子の張替えなどの仕事もできるようになってきました。

周りの人たちが、しっかりサポート。

正社員 松本 尚樹さん
(21歳)H28年入社 折込

チラシの紙質によっては、2枚入ってしまったり、チラシ同士がくっついたりすることがあるので、よくほぐしてから機械にかけるように気をつけています。わからないことや困ったことがあると、周りの人たちが教えてくれるので安心です。

網戸の張替えも、まかせてください。

正社員 鈴木 翔多さん
(19歳)H29年入社 折込

チラシが多いほうが、2枚重なって入ることも少なく、折りがスムーズにいくのでやりやすいです。お客様サポートでやっている網戸の張替えはすっかり得意になりました。ここには学校の先輩が2人いて、いろいろ指導してくれるので心強いです。

市の福祉課の方が、コーディネーター役に。

風間新聞店(掛川市)
店主 風間 博志さん(48歳)

障がい者の雇用を意識したのは、掛川市の福祉課の方が福田さんを紹介してくれたことがきっかけです。「まずは面接を」ということで、福祉課の方と福田さんが一緒に来社し、面接をする中で、普通免許を取得していたことから、朝夕刊の配達をお願いすることにしました。最初は少ない部数からスタートし、4年目の今では他の社員と同様の部数をこなしています。顔なじみのお客さんも多く、野菜をいただいてくることもあるようです。当初はたくさんの部数を配るのは大変だろうと思っていましたが、何の問題もなく、むしろ手際がいいし新聞の不着は一度もない、営業もしてくれるなど優秀なことに驚いています。福祉課の方が間に入ってくれたからこそ、面接・採用につながったのだと感謝しています。

あいさつしたり、声を掛けられたり。

正社員 福田 翔吾さん
(27歳)H27年入社 配達

以前は工場で働いていましたが、新しいことにチャレンジしたくて、新聞販売店の仕事を選びました。新聞配達は全部配り終わった時や、お客さんにあいさつをしたり、声を掛けてもらったりした時に、やりがいを感じます。営業のほうはなかなかうまくいかないので、もっと頑張りたいと思います。これからも車に気をつけて、交通事故をしないよう、朝刊、夕刊の配達をしていきたいです。