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熱中症は、なぜ、起こるの?

(2020年8月6日号掲載)

毎年、暑い時期が近づくと話題になる「熱中症」。重症化すると「命の危険に及ぶこともある」などと言われますが、そもそも熱中症はなぜ起こるの?どんな症状?予防や対処法は?そんな疑問について、浜松医療センター 救命救急センター・救急科の加藤俊哉先生に伺いました。

浜松医療センター 救命救急センター副センター長救急科部長 加藤俊哉先生

総務省消防庁によると、昨年5月から9月までに、静岡県内で熱中症により救急搬送された人は1822人。年齢別でみると、65歳以上の高齢者が886人と最も多く、全体の約48%を占めていました。

夜間や室内でも油断は禁物

熱中症は、なぜ起こるのでしょうか。加藤先生は「私たち人間の体は、高温多湿の環境や運動・労働などによる暑さで体温が上昇すると、汗を出したり、熱を皮膚の表面から体の外に逃がしたりして、体温を下げるように調節します。ところが、気温や湿度が高く、風がないような場所に長くいると、体温を調整する働きがうまくいかなくなり、体の中に熱がたまって水分が失われ、熱中症が起こりやすくなるんですよ」と説明します。

熱中症が起こるのは、暑さがピークを迎える真夏の日中で、場所は屋外というイメージがありますが、それだけに限りません。「熱帯夜が続く夜間の室内をはじめ、5~6月の蒸し暑くなる時期にも、体がまだ暑さに慣れていないため、熱中症になることがあるので注意が必要です」と加藤先生は言います。

症状が悪化する前に早めの対処を

では、熱中症が起こるとどんな症状になるのでしょう。「医学的には重症度別に、I度、Ⅱ度、Ⅲ度と3段階に分類されます」と加藤先生。重症度の低いI度では、めまい、多量の発汗、筋肉痛、こむら返りなど「熱けいれん、熱失神」と呼ばれる症状が見られます。この場合は涼しい場所に移動して、体を冷やし、水分や塩分を補給して安静に過ごします。症状が改善すれば、受診の必要はありません。

Ⅱ度になると、頭痛や嘔吐、倦怠感、集中力や判断力の低下といった「熱疲労」の症状が見られます。この場合は医療機関での受診が必要です。また、I度の症状に改善が見られず、Ⅱ度の症状が現れたら、やはり受診をして、点滴などの治療を受けることが必要です。

Ⅲ度は重症の段階です。汗をかかなくなって、肌が赤く熱くなり、意識の低下やけいれんなどを起こす「熱射病」の症状が見られます。この場合は、入院して集中治療が必要となります。自分で水が飲めなかったり、動けないときは、すぐに救急車を要請しましょう。

こまめな水分補給と室温調整が大切

熱中症の予防には、のどが渇いていなくても、こまめに水分を補給することが大切です。「のどが渇いたときはすでに脱水状態になっていることが多いので、のどが渇く前に水分をとるようにしてください。特に高齢者は、のどの渇きを感じる感覚が弱くなり、水分不足を感じにくいため、十分に注意が必要です」と強調する加藤先生。

屋外では日陰を歩いたり、帽子や日傘を利用したりすることはもちろん、「室内でも熱中症は起こります。暑い日は無理せずエアコンを使いましょう。室内の温度もこまめに調節することが大切です」と加藤先生は言います。 また、今年は新型コロナウイルスの影響で室内にいる時間が長く、汗をかきにくい体になっているので、例年以上に気を付けることが必要です。

「注意したいのは、熱中症と新型コロナウイルスの症状がよく似ていて、区別が困難だということです。ただ、熱中症は十分に予防ができます。ぜひ予防対策を徹底してほしいです」と話す加藤先生。

命の危険さえある熱中症の予防と対処をしっかり行って、今年の夏をみんなで乗り切りましょう。

■重症度別の症状と対応(日本救急医学会熱中症分類2015)

Ⅰ度応急処置と見守り
症状
めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗 筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り)、意識障害を認めない
治療
通常は現場で対応可能
●冷所での安静、体表冷却、経口的に水分とNaの補給
Ⅰ度の症状が徐々に改善している場合のみ、現場の応急処置と見守りでOK
Ⅱ度医療機関へ
症状
頭痛、嘔吐、 倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下
治療
医療機関での診察が必要
●体温管理、安静、十分な水分とNaの補給(経口摂取が困難なときには点滴にて)
Ⅱ度の症状が出現したり、Ⅰ度に改善が見られない場合、すぐ病院へ搬送する(周囲の人が判断)
Ⅲ度入院加療
症状
下記の3つのうちいずれかを含む
①中枢神経症状(意識障害、小脳症状、けいれん発作)
②肝・腎機能障害(入院経過観察、入院加療が必要な程度 の肝または腎障害)
③血液凝固異常「急性期DIC診断基準(日本救急医学会)にてDICと診断」※Ⅲ度の中でも重症型
治療
入院加療(場合により集中治療)が必要
●体温管理(体表冷却に加え体内冷却、血管内冷却などを追加)、呼吸、循環管理 DIC治療
Ⅲ度か否かは救急隊員や、病院到着後の診察・検査により診断される
熱中症の応急手当
  • 涼しい場所や日陰のある場所へ移動し、衣服を緩め、安静に寝かせる。
  • エアコンをつける、扇風機・うちわなどで風をあて、体を冷やす。
  • 体を冷やすためには、体表近くの血管を冷やすのが効果的。

環境省熱中症予防情報サイトより