スポーツ

スポーツの季節 Vol.2

モトクロス

(2016年6月9日号掲載)

平日の夕方、天竜川の河川敷ダートで練習する袴田君。
休日はほぼ毎週、全国各地で開かれる大会に出場している

甲高い排気音、巻き起こる土煙。それらを置き去りにして、袴田哲弥君が乗る85㏄ミニモトクロッサーは宙を飛んだ。夕暮れ迫る、天竜川の河川敷。上り坂のダートを駆け上がったマシンは、勢いよく空中へダイブし、初夏の空に低い放物線を描いた。

モトクロスは未舗装のコースを舞台に、スピードを競い合うモータースポーツだ。丘陵地に人工的な起伏をつけたコースで、選手は土まみれになりながら激しいレースを繰り広げる。

袴田君は浜松市内の中学に通いながら、全国で開かれるモトクロスの大会に出場。学校が終わると、天竜川や豊橋の練習場へ移動し、暗くなるまで練習に励む。

「ライダー8割、マシン2割」がモトクロス界の常識だ。どんなにバイクの性能が良くても、最終的には乗り手のテクニックが物を言う。視界は土煙で遮られ、聞こえるのはバイクの排気音のみ。嵐にも似た状況の中、選手たちは自分の感覚を頼りに不安定なダートを走り抜ける。

「一歩間違えると、他の選手と接触して二人とも転倒してしまう。雨上がりは泥にはまって抜け出せなくなることもあるので大変ですね」

過酷な競技ゆえに、ライダーにかかる負担は大きい。昨年の夏、袴田君はスペインのマドリードで行われた世界選手権に出場した。全国大会を制して勝ち取った、あこがれの舞台。ところが、予選前のテスト走行で転倒、右手首を負傷してしまう。

「思い切り走ったら転んでしまい、ドクターストップがかかってしまいました。ケガは慣れっこだけど、やっぱり出られないのは悔しかった」

袴田君はこの半年間で6カ所の骨を折った。モトクロスを志す人間にとっては避けては通れない道。だが、それを補って余りある喜びもある。

「長いジャンプが決まった時や、コーナーをアクセル全開で走れた時はうれしい。たくさんの大会で表彰台に上がれるようになりたい」

モトクロスのジャンプは時に25mもの距離を飛ぶ。決して高く跳ぶ必要はない。踏み切りの勢いを殺さないよう、低く、まっすぐ飛ぶことが、優れた選手の証だという。

袴田哲弥

2003年、浜松市生まれの中学1年生。2歳からバイクに乗り始め、5歳でレース出場。2014年、MFJモトクロス全国大会で優勝し、翌年、スペインで行われたジュニアワールドチャンピオンシップス65ccクラスへ出場。昨年はMFJ中部選手権年間ランキング6位。5月の全日本選手権広島大会で3位入賞を果たした。