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「使ってみたくなる技術」を目指して ASTI株式会社 代表取締役社長 小野塚賢平さん

このコーナーでは毎月1回浜松をリードする人物の横顔に迫ります。今回は「痛くない注射針」を開発したASTI(アスティ)株式会社社長の小野塚賢平さんです。 (2012年1月26日号掲載)

 

key120126A.jpg 【プロフィール】
1950年、新潟県生まれ。慶応義塾大学工学部卒後、日本楽器製造株式会社(現・ヤマハ株式会社)へ入社。2000年に退社し、ベンチャー企業立ち上げに関わった後、ASTI入社。2009年から代表取締役社長。趣味は音楽・絵画鑑賞、ジョギング。家族は妻と2人の娘、猫。

ASTIってどんな会社?
県西部を拠点に車載電装品、情報通信機器、ホームエレクトロニクスなど幅広い分野で設計開発から製造まで行う企業。近年は実験用電気自動車「evivo」や、浜松医大と共同で「痛くない注射針」を開発するなど新規分野への参入を積極的に行っている。従業員数はグループで3417名(2011年3月末現在)。


「痛くない注射針」を開発

昨年、浜松医科大学と共同で痛くない注射針「マイクロニードル」を開発しました。これは針の先端Rの大きさが0.01mm、薬液の流路は0.075mm×0.025mmという超極小の注射針。極細のため皮膚にある痛点に触れにくく、刺しても痛みをほとんど感じません。たまたま痛点に当たるとチクッとすることもありますが(笑)。

この技術は先々代社長が「将来役立つ技術を今のうちに仕込んでおこう」と考え、10年ほど前から研究していた超微細加工技術を応用したもの。マイクロニードルは極細の針を約20mm角の剣山状に並べて使いますが、プラスチックで成形する際にどうやって針に穴を空けるかが非常に難しい課題でした。そこで私たちは、針を縦半分に割って流路の溝を掘り、あとでくっつける作り方を思いつきました。このやり方なら一気にたくさん作れる。技術的な問題を発想の転換で解決したというわけです。


エレクトロニクスで町づくり

私たちは電子機器の開発・設計・製造を行う会社。そんな企業が医療分野に参入できるのは、さまざまな産業が集積していて医大もある浜松ならでは。個人的な事情としては、父親が開業医をやっていたので医療への関心が高かった。父は私を後継ぎにさせたがっていたので、ちょっと負い目を感じていたのです。

それと最近、力を入れているのは「パワーエレクトロニクス」。電気自動車などのバッテリーに効率よく充電する技術や、電気を交流から直流に変えたり電圧を変えたりして使いたい形に変換する技術の開発を行っています。昨年は震災による計画停電で大混乱しましたよね。今後、電気を効率的に使う技術は車だけでなく、日常の中で必要になってきます。発電所から家庭の機器まで、電力網を通じて需給を賢く町ごとコントロールする。そんな「スマートシティ」が世界のあちこちで実現しようとしています。私たちもパワーエレクトロニクス技術をいろいろな分野に活用していきたいと思っています。


音楽好きが高じて浜松へ

子供のころはバイオリンを習っていて、学生時代はジャズに夢中でした。浜松に来たのも、音楽が大好きでヤマハに入社したから。「自然もあるし、楽器もある。いいところだな〜!」と感動しましたよ。ただ、浜松は「楽器のまち」であって「音楽のまち」にはなりきれていないような気がします。自分で演奏する面白さ、良い音楽に触れる楽しさをもっと日常的に大勢の人が知れるような場ができるといいですよね。

key120126B.jpg そういう意味では技術開発も同じで、ただ作るだけじゃなく、それでどんなものが実現できるのかをイメージしてもらうことが大切。3年前に実験用電気自動車evivo(イー・ヴィーヴォ)を作ったのも、私たちの技術力をみなさんにしっかり伝えたいと思ったからです。日本は高い技術力を持っているのだから、それをもっと魅力的なものに仕上げてアピールしていけば、まだまだ世界と戦っていけると思っていますよ。

(聞き手/編集室 鈴木淳博)

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