心に体に効く太極拳
日本の太極拳人口は150万人といわれています。今回は老若男女を問わず親しまれる太極拳の秘密を、元北京体育大学武術講師、現静岡大学講師の周佩芳(しゅう はいほう)先生に伺いました。(2010年1月21日号掲載)
武術から健康法へ
今は「楊式」が主流
ゆるやかで穏やかな動きが印象的な太極拳ですが、実は中国伝統武術の一種です。古代中国から発展してきた数多くの武術流派のうち現代まで受け継がれたのは300~400種目。これらはさまざまな動作から構成される「套路(とうろ)」と、技を用いて相手と対戦し勝負を決める「格闘技」に大別されます。套路は日本の武道における型に相当し、太極拳はこちらに属します。
太極拳の起源については諸説ありますが、最も有力なのが明時代末期(1600年前後)に陳王廷が有名な武術家の決まり手をまとめたものが始まりという説。清時代の末期に武術家だけでなく貴族や民間人にも教えが広がるにつれ、戦いを目的とした激しい動きからゆるやかな動きに変化していきます。その動きが「陰」「陽」を兼ね備え、変化(=太極)に富み優れているということから、その名が付きました。今から200年ほど前のことです。
太極拳には陳式、楊式、武式、呉式、孫式の五大流派があります。これらの中には激しい動きのものや剣や刀などの道具を使う型も見られ「これも太極拳なの?」という鋭い動作も。そんな中、現在最も日本で普及しているのは簡単な「楊式」です。円を描くようなゆっくりとした動作を深呼吸に合わせて行うのが特徴で、初心者が始めやすく健康法としても広く愛されています。
「陰」と「陽」
自然界にあるものや人間の行動は「陰」と「陽」に分けられます。静と動、虚と実、屈と伸などがその例。これらは別物ではなく、陰の中にも陽は存在し、陽の中にも陰が存在すると考えられています。両者が互いに対立しながらも支えあい、入れ替わっていくという「変化」。これを表すのが太極拳なのです。
筋力アップ&血流促進
今や健康法の一つとして愛される楊式太極拳には体にいいコトがいっぱいです。まず「筋力アップ」。多くの動作は片足を軸に支えているため脚力が強くなります。ゆっくりとした動作で長時間安定した姿勢を取り続けることから背筋や腹筋が鍛えられ姿勢が良くなる効果も。
次に「血流促進」。軸足を交互に入れ替えるため、緊張している軸足をリラックスへと移行する時、血液が一気に流れます。つまり足の動きはポンプの役割を果たし、血行が良くなるというわけです。
ゆっくりとした動きは筋肉の細部にまで働き掛けます。また手足の左右違う動きは、脳への刺激も期待されます。静かな動きは雑念を払う必要があるため、心が落ち着く効果も。さらに交感神経と副交感神経への刺激は自律神経のコントロールにも効果的なのだそうです。
やってみよう基本動作
周先生の指導のもと、基本の動きを読者の木谷綾子さんが体験しました。皆さんもやってみましょう。大切なのは「調心、調息、調身」。雑念を払い呼吸を整え、姿勢を正して行うことが重要です。呼吸は自然に、腹式呼吸を行います。一般的に手を上げたり開いたりするときは息を吸い、下げたり戻したりするときは吐きます。

体験者 木谷さんの感想
見るのとやるのとでは全然違いますね。腿がパンパンに張って痛いです(笑)。短時間なのに汗がじんわり出てきました。私は手足が冷たいのが悩みですが、ちょっとやっただけで手先が温まるなんてスゴイ。これから寝る前にこの基本動作をやってみようと思います。足先がポカポカで寝られるといいな。
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