暮らし

花のリレー・プロジェクト デザイナー

吉谷桂子の世界

(2020年5月28日号掲載)

日本古来の自生種が、野原のように可愛い花を咲かせる天竜二俣駅と吉谷さん

はままつフラワーパークの塚本こなみ理事長とともに本プロジェクトのデザイナーを務める吉谷桂子さん。日本を代表する英国園芸研究家であり、全国に熱烈なファンを持つ吉谷さんに、将来の天浜線の情景や植栽プラン、沿線の人々とつくり出す花のリレーへの思いを伺った。

20年先の情景を思い描き地域住民と一緒に花を植えるそんなプロジェクトに賛同!

私は植栽デザインのお話をいただくと、必ず現場を見に行くことにしています。庭をつくった時に見栄えはするか、周りの景色はどうか。私たちの仕事は植えた時から始まる。 植えた時に終わるのではなく、そこから始まる。周辺と調和するまでには月日が掛かるものなのです。

このプロジェクトの話をお聞きした際、塚本こなみ先生をはじめ担当の皆さんの熱意を感じ、直感的に賛同を決めました。10年先、20年先の情景を思い描き、住民の方と一緒に植栽を行うアダプトプログラムは素晴らしい考え方です。

2017年の10月から翌年の3月まで数回にわたり、天竜浜名湖鉄道沿線を視察。初めて天竜二俣駅を訪れた時、素晴らしいところだなあと思いました。私は東京の新宿区に生まれ、豊島区育ちのため、緑のある田舎への憧れが常にあったんですね。

草花を植えた場所が心のふるさとになる

四季折々咲く花を見て元気になったりいやされたり...。手を掛けて草花を植えた場所は、心のふるさとになります。私が第2のふるさとを感じたように、皆さんにもここを気に入ってほしいと思いました。

天竜二俣駅も手入れする前は、草ぼうぼうの状態でしたが、天浜沿線には将来的可能性があると感じました。というのも、私がイギリスで学んできたイングリッシュガーデンというのは、自然とどう親しむか、自然と人間をどうアダプトさせるかという自然回帰主義的な庭づくりなんですね。

私がこれまで培った経験とノウハウを生かし、この沿線の魅力を引き出したいと思いました。

日本古来の草花が咲く天竜二俣駅の自然と人にやさしい庭

古い木造の駅舎、転車台、のどかな風景...。天竜二俣駅には日本人の誰もが抱く郷愁があります。そこで、線路沿いの空き地に、オミナエシ、ミソハギ、フジバカマなど日本古来の自生種をたくさん植えようと考えました。日本原産の草花を取り入れながら、生物多様性も重んじたナチュラリスティック・ガーデン。人工的で人間の思い通りに作り上げた庭ではなく、野原のイメージ。

雑草と見分けるのが難しく、3年ほどは手が掛かりますが、根が張っていくと自然に落ち着いてきます。相性のいい花同士がタッグを組み、雑草も出にくくなるようにするのが理想です。人間の思い通りに作りあげる庭ではなく、ここが好きでここで咲きたい花を大事にしようという考え方。除草剤や化学肥料を用いないので、自然に負荷をかけずメンテナンスが楽という利点もあります。

お母さんが子どもと訪れて花を背景に写真を撮ったり、若い子が「ばえる~」と言ってインスタにアップしたり...。四季折々の風景を楽しみ、植栽や手入れに関わる地域の人たちが、自分の子どもや宝のように感じるみんなの庭に育ってほしいですね。

PROFILE吉谷桂子(よしや・けいこ)

英国園芸研究家、ガーデン&プロダクトデザイナー。7年間英国に在住した経験を生かしたガーデンライフを提案。雑誌やイベント出演のほか講師を務め、著書も多数。各地の庭園やレストランなどの植栽デザインを担当。また、2014年より、はままつフラワーパークの150mのダブルボーダーガーデン「スマイルガーデン」のデザインを担当している。

はままつフラワーパークのスマイルガーデン
イングリッシュガーデンとは

幾何学的なフランス式庭園に対し、起伏のあるイギリスの地形を生かした自然風景のような庭園方式をいう。吉谷さんも影響を受けたランスロット・ブラウンは風景式庭園の設計者で、18世紀から19世紀にかけて自然主義的な庭園スタイルを主導的に広めたデザイナーの一人。「もっと素晴らしい庭園になる将来性(ケイパビリティ)がある」と言う口癖から、「ケイパビリティブラウン先生」と呼ばれた。

これから見ごろの植栽地

フルーツパーク駅
ゼフィランサス 他(6月~10月)
気賀駅
スイセン各種(4月~11月)
金指駅
シモツケ、フジバカマ 他(4月~9月)
岩水寺駅
フジバカマ、ツワブキ 他(7月~12月)

※気候条件によっては咲いていない可能性もございます

これまでの活動

気賀駅
2019年11月9日、気賀駅にてパワー浜松ロータリークラブをはじめ細江中学校や近隣の企業、花の会の皆さん96名が参加。ソメイヨシノ、エゴポディウム、スイセンなどの植栽が行われた。
金指駅
2019年11月19日、金指駅にて浜松ロータリークラブをはじめ近隣の中学や高校、自治会、企業など113名が参加。ユキヤナギ、テマリシモツケ、バーベナボナリエンシスなどの植栽が行われた。
岩水寺駅
2019年11月23日、岩水寺駅にて浜北および浜北伎倍ロータリークラブをはじめ自治会や近隣の企業など100名が参加。ヒナハチジョウ、ノリウツギ、ツワブキ、八重シュウメイギクなどの植栽が行われた。

花のリレープロジェクトとは

「浜松いわた信用金庫」、「天竜浜名湖鉄道」、「はままつフラワーパーク」の3つの企業が母体となり、地域に暮らすみなさんと一緒に天竜浜名湖鉄道の沿線に花を植えることで地域の活性化を目指すプロジェクトです。

アダプト・プログラムとは

アダプト(ADOPT)とは英語で「○○を養子にする」の意味。一定区画の公共の場所を養子に見立て、市民がわが子のように愛情をもって面倒をみる(=清掃美化を行い)ことを「アダプト・プログラム」といいます。